目の前の相手は「人」か?「物」か?

人は誰でも自己欺瞞の「箱」の中に入ってしまう。

この本では、次のような例を書いている。
夫と妻と赤ちゃんの3人で寝ている時に、赤ちゃんが夜泣きをした。
その時、夫は一瞬、「子どもをあやさなければ」と思うが、「明日、朝から重要な会議があるから」と思い、
妻があやしてくれるのを待ったが、妻は起きない。
そうすると、自分のことは「仕事を大事にする立派な人間」という風に正当化し、
妻のことを「自分勝手な人間」という風に心の中で非難する。

自分が他人に対してすべきだと感じたことに背く行動をする(自分への裏切り)と、
周りの世界を、自分への裏切りを正当化する視点から見るようになるということ。
これを「箱」に入ると表現している。

そして、さらに悪いことに、それを繰り返していると、自分への裏切りがなくても、
その正当化した「箱」を自分の性格と見なすようになる。

この本を読んだ時に、自分に思い当たる行動がいくつもあり、心が痛くなった。
仕事でミスをした人を責めてしまった時。
相手が期待どおりの働きをしてくれなくて失望した時。
こうした時に、自分が「箱」の中に入ってしまっていた経験が何度もある。

悪いのは相手で、自分は被害者。
変わるべきは相手で、正しいのは自分。

では、どうすれば「箱」から出ることができるのか?
それは、シンプルな方法で、「自分が箱の中に入っていることに気づくこと」。

ここでは家族の例を書いたけど、この本の主題は、会社などの組織では、誰もが箱の中に入る可能性があるということ。
逆に、みんなが箱の外に出れば、自分を正当化したり大きく見せたりすることに労力を割くのではなく、
成果を出すために最善の行動を取れる。

とても大事なことが、とてもシンプルに、実践しやすいように書かれている。
大きな会社全体では難しいかもしれないけど、同じ部署の人全員がこの本を読むと、何かが変わるかも。

今、自分は自分を正当化していないか?
今、自分は相手を道具のように見ていないか?
今、自分はうまくいかない責任を相手のせいにしていないか?
今、自分のイライラの原因を相手に求めていないか?
今、自分は本当に相手の気持ちになれているか?